ねこのひたい~絵日記室<ネタバレなしの映画評?>

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「ビフォア・サンセット」

『スクール・オブ・ロック』が、なぜ音楽についての映画だったのか、納得させられた前作でした。

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というわけで、『恋人たちの距離(ディスタンス)』の続編も、借りて見たのでした。

前作同様、今作でも、音楽の使い方にこだわりを見せていますが、今回はまた別の試みがされていました。
それは、映画内で進行する時間と上映時間をシンクロさせる、ということです。

そうした「シンクロ作品」はかつてもありました。
むしろ全編ワンシーン・ワンカットへのこだわりが結果的に倫理的に同様の試みになっていた、ヒッチコック監督による『ロープ』が有名です。
また、最近、と言っても10年前ですけど、『ニック・オブ・タイム』もありました。
こちらは、タイトルにも<タイム>が冠され、オープニングのタイトルバックはダリの絵画のようにゆがんだアナログ時計のデザインが施されていて、ダリ→『白い恐怖』→ヒッチコック→『ロープ』を連想させてくれます。また、主役のジョニー・デップが、エキセントリックではなく、しかも初の父親役という点では、当時のデップの新たな可能性を示したエポックメイキングな作品と言えます。
しかし、日本公開は『エド・ウッド』と『デッド・マン』に挟まれていて、それだけでどうにも分が悪い。しかも、デップが気を失ってフェード・アウトし、フェード・インして目を覚ますとクリストファー・ウォーケンがいる別室に移っている、つまり時間の省略が施されている、つまり「シンクロ作品」の看板に偽りがある、つまり見てる人をバカにしているわけで、しかもそれがかなり前半ということもあって、それ以降はデップのように意識でも失ってないと映画館の客席をことごとく破壊したくなる衝動に駆られます。それを抑えるためには、そもそもジョン・バダムの映画なんだから、と自分で自分を慰めるしかない作品ですが、せめてもの救いは、上映時間が90分という点だけです。

そんなムカムカする思い出はさておき、結局のところ美しい街を舞台にした美男美女の「おとぎ話」でしかない物語に、誰しもひとつくらい身に覚えがありそうな細部を持たせることで、「こんな経験、わたし(ぼく)にもあり得た、いや、あった」と勘違いさせて共感を呼ぶことに成功していた前作から、実際の撮影も、映画内の設定も、9年後の続編である今作、ユマ・サーマンとのてんやわんや前後と思われるイーサン・ホークの歯並びとその黄ばんだ色の酷さも辛いものがありますが、我等が<夜の天使>デルピー嬢に松原智恵子化をもたらした時間というものの非情さを感じざるを得ません。
その甘酸っぱい思い出の中の果実がしぼむサマと、それがそのまま見ている自らにも跳ね返ってくる「現実」というものもまた突きつけられます。
というのは10日と置かずに2作を見たせいかもしれず、実際に9年越しで見た人は、また別の感慨もあるんでしょうけど。

場所はカフェ、観光船、ハイヤーと転々としますが、ひたすら会話に終始、その会話の内容はどこか2人に都合のいい過去だったりと、やっぱり「おとぎ話」です。2人に絡む印象的な人物を配するわかりやすさも排除して、カッコ付きの「物語」としては何も起こらず淡々と進んでゆきます。前作の一夜よりも、前作の上映時間約100分よりも、短い80分で訪れるデッドエンドに追い立てられるかのようにひたすら会話のみです。

それが、チェという名のネコが画面を横切るや、一変します。
そこからデルピー嬢の住むアパルトマンの中庭へ進むと、パーティーの準備をする人々がいます。短く会話する老夫婦はちょっと判り易すぎる気がしないでもないんですが、中庭から建物の中へ入ると、先行するカメラが、部屋へと向かうために階段を登る2人をミディアムショットの長廻しで捉えます。
部屋に入った2人になにが起きるのかは、ご覧になって確認いただくとして、階段の2人は、それまで止むことのなかった会話らしい会話を交わすことなく、なんとも形容しがたい表情で一歩ずつ上を目指すだけという、ほんの短い時間ですが、そこが素敵です。


会話がないので字幕もないおかげで2人の表情をじっくり拝めたから、そう思ったのかもしれませんけどね。


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コメント

ゲバラ

猫の名前が「ゲバラ」だったら大変でした。
アパートのシーン、いいですね。ステキです。

男は9年たってもそれほど容色が衰えることもなく、かえって憂色がプラスされてイイ感じになるのに。
ジュリー嬢はあわれ松原智恵子に…。

年月って残酷だわ!

  • 2005/11/16(水) 20:30:15 |
  • URL |
  • あむろ #y.6mc9WE
  • [ 編集]

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