ねこのひたい~絵日記室<ネタバレなしの映画評?>

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『エレファント』

「『グッド・ウィル・ハンティング』のガス・ヴァン・サント監督が、「”コロンバイン高校銃乱射事件”を題材に、高校生の日常を淡々とドキュメンタリータッチで描いた」、「カンヌ映画祭史上初のパルム・ドールと監督賞のダブル受賞」という、この作品をDVDにて見ました。

現在の日本における興行形態の中でこの作品を映画館で見たとすれば、上記にあげたいずれかまたは全ての情報を事前に知ていた人がほとんどだったはずです。中には、映画好きの恋人や友人にタイトルだけ聞かされて「象さんの出る映画だ」と思い込んで見に行った人がいるかもしれませんが、そういう人とぜひ友達になりたいので今すぐ連絡してください。



長廻しの移動撮影で人物を追い続けまるでドキュメンタリーのように見えるけれど、その後に他の人物の視点で同じ場面が正確に繰り返される、つまり周到な準備によって撮影されているという複雑な構造を持つにもかかわらず、別視点として現われる人物とすれ違う際に意図的にスローモーションにしてわかりやすくしています。あるいは、意地悪な校長とかアメフト部員のモテモテ君とか、人物設定がかなりステレオタイプで、イジメにあっていたとか、残酷なテレビゲームが好きだったとか、犯行に及んだ人物の描写もそうです。
ガス・ヴァン・サント監督の映画は、特異な題材を扱いつつも、それらが人を不安や混乱へ陥れるのではなく、なんとなくわかってしまうというか、どこか腑に落ちてしまうところがありましたが、『エレファント』もそうでした。
そもそも、事件が起こる前の平穏な日常を描写するというところがすでに図式的ですし、象さんの映画だと思ってた観客以外の大多数も「平穏な日常」のあとには大虐殺が起きることをわかっていて、だからこそあえて見せないという手もあったはずなのに、それをきっちり見せちゃうというところも、わかりやすい。

同じ事件を扱った『ボウリング・フォー・コロンバイン』と比較され、一方をけなし一方をほめる記述をしばしば見かけます。例えばマイケル・ムーアは声高に政府を批判してそれを観客に押し付けているのに比べ、サント監督は静謐に事件を見つめていて観客に解答をゆだねている、といったものです。そんな思想的な差異に基づく線引きを取り払って見れば、この両作品は実はとてもよく似ていると気づくはずです(しかし、『エレファント』だって前述の通り至るところにわかりやすいイコンをちりばめて、観客をそれと気づかぬ間に誘導しているのですから、思想的な点でも似たり寄ったりなんですけど)。
それは、どちらの作品もスクリーンに映っていたのは”人がドアから建物に出入りする姿である”という点です。
『ボウリング・フォー・コロンバイン』のマイケル・ムーアは、ドアを閉ざされることも多く、”カナダの玄関はカギが掛かってるか?”を検証するシーンでは開いているドアに入ろうともしないのに、時にはまんまとヘストン邸のドアをくぐったりします。
『エレファント』は、登場人物がいともたやすくドアをすり抜け建物に出入りする姿が執拗に描かれます。ところが、なぜか銃乱射事件が始まると、屋外へ出るドアなんて建物に存在しないかのように建物の中を逃げ惑うばかり。なんとか建物の外に逃げる者もいますが、なぜか窓からといった具合です。
実際の事件がそうだったのか知りませんけど、マット・デイモンが故郷から旅立つラストシーンを、家のドアから外へと飛び出すことで描いた『グッド・ウィル・ハンティング』にもつながる、ドアに対するサント監督のこだわりが垣間見えた気がします。

カンヌうんぬんかんぬんに関しては、長い歴史をもつ映画祭なんだしそういうこともあるさ、と、オミクジで大凶を引いた人への慰めとほとんど同じ確率論じみたコメントしか言うことがありません。


サント監督が今作の前に撮った『GERRY ジェリー』の記事はこちら


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ありがと。サンキュ。

  • 2005/04/30(土) 09:44:24 |
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  • ダイカ #-
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エレファント

ガス・ヴァン・サント監督のカンヌ映画際パルムドール作品。 悲しいです。ですが、こういう事件があったことを心に入れておくことは大切なことだとおもいます。 DVDには監督のインタビューがはいっているのですが、伝えたかったことがきちんと映像にでていました。

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