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胡蝶の夢か。

配給元SPOの直営館であるシネマート六本木での封切から半月以上経過して、まさかこれがうちの近所のシネコンで上映されるとは思いもしませんでした。
いくら松竹が関わっているとはいえ、製作母体は「あの」伊藤秀裕氏が社長を勤める「あの」エクセレントフィルムですよ。
いまどき国際映画祭に出される作品なんて芸術性が高いかもしれないものの娯楽性に乏しい国内興行力のない映画に決まってるわけで、ベルリン国際映画祭正式出展作品だからといって地方のシネコンで上映する正当な理由とは思えません。
この夏の『釣りバカ』を上映しなかったのに、これを上映するなんて、いくら映画会社直営ではないインディーズ系のシネコンとはいえ、まともなシネコンのやることじゃない気がします。かつて某映画雑誌のシネコン紹介記事でシネコンから除外されてしまい、抗議したのか次の号で訂正記事が載ったという意味でシネコンまがいの烙印を押されたシネコンらしいといえばらしいんですけど。
もしかして真樹日佐夫氏との縁故でもあるのかな?
とはいうものの、業界のシガラミとは無縁の身分ですから、そんなことはどうでもよろしいわけです。
せっかくの休日に何事だと言わんばかりの家族を尻目に、いそいそと出掛けてまいりました。いえ、正確に記述するなら、その日は1パック97円のタマゴを購入する必要があると前日からクギを刺されていたものの、早朝の上映でスーパーの開店前には終わるから見終わり次第そこに寄って必ずタマゴ1パックを入手するから行かせてくださいとなかば土下座気分で懇願し、なおかつ、すがる「みにら」たちには「ちょっとお仕事にいってくるから、いい子で待っててね」と心ならずもウソをつき、残念至極といった風情で手を振り涙の別れを演じて、玄関のドアを閉めるや満面の笑みを浮かべて出掛けたのでした。
できることならスキップもしたかったところですが、自動車を運転中のスキップは苦手なので止めておきました。
それにしてもどんな頭の中してるんだか、NAKA雅MURA。
物語の骨格は、芥川龍之介の「藪の中」というより映画の『羅生門』のといったほうが判りやすいでしょうか、少年院におけるある殺人の真相を巡って複数の視点による証言と回想で構成されています。
形式としては殺人の真犯人探しというミステリーではあります。しかし、伏線らしい伏線が張られているわけでもなく、観終えてからもしかしたらあれがそうだったかもしれないという描写はありますが、その過程も結末も決してミステリー好きな方を満足させるようなものではありません。
なにしろ、そこには天国と宇宙に関する思索まで盛り込まれてます。物語の舞台はほとんど少年院の中にも拘らず、その世界観は地球規模さえ超えて限りなく巨大なものとなっています。これに比べて、東南アジアの島国が沈没するといって大騒ぎしている映画の、なんとチマチマしたことか(って、タマゴ1パックに右往左往してるケツの穴の小さい人間が言うな)。
そんな脚本を、セットらしいセットは監房ひとつだけで、あとはパチンコ屋の地下に小道具を置いただけという『ドッグヴィル』を思わせる簡素というより粗末な装置で撮影してしまう三池崇史監督。
そんな装置の中で、尋問といういわばセリフの洪水ともなれば、NHKあたりが放送する舞台中継の様相を呈してしまいがちなんですけど、様々な仕掛けを駆使して、映画として成立させています。
例えば、天国を象徴する巨大なピラミッド、宇宙を象徴する巨大なロケット。
いかにもCG然としている画なんですけど、そのリアリティのなさゆえ幻想性を増幅させています。
あるいは、切り返しで不意に少年に戻ってしまう安藤政信。
あるいは、安藤政信の刺青。
あるいは、青く燐光放つ蝶。
あるいは、胸を貫いた閃光。
あるいは、灰燼に帰す囚人。
極めつけは、石橋凌演ずる少年院院長です。
ドイツ表現主義を思わせる歪んだ窓枠を背にして、終始座ったまま喋るセリフの内容にまったく似つかわしくない声のトーンと抑揚、そして、笑顔以外のなにものでもないはずなのにこんな笑顔がこの世に存在していいのかと思わせる血も凍るような笑顔。
その笑顔の意味を問われて「ノロイ・・・かもしれません」と答えニンマリ笑う石橋凌のショットの恐ろしさ。
文章力の拙さゆえ抽象的な記述になってしまいましたが、こんな記事を読んでなにかピンと来た方は、ぜひご覧になってください。
見たらメン類が食べたくなるらしい映画があるそうですが、今作を見てしまうと、何の変哲もないそこらに売ってるジャムパンを食べるとき涙が溢れることになるでしょう。
ただし、コンビニに入るたびにジャムパンの前で涙を溢れさせてしばし佇んでいると、それを不審に思った店員により警察に通報され、石橋凌がいる少年院行きになっても当方で責任は持てません。
てなわけで、無責任にクイズです。
問1:カンヌ映画祭に出品された三池監督作品は?
A.『妖怪大戦争』
B.『極道恐怖大劇場 牛頭』
正解は
こちらのランキングサイトに。
問2:ヴェネチア映画祭に出品された三池監督作品は?
A.『IZO』
B.『サラリーマン金太郎』
正解は
こちらのランキングサイトに。
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公式サイト監督/三池崇史
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