ねこのひたい~絵日記室<ネタバレなしの映画評?>

 ~ネタバレなしでも、読めばガッカリ~

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「世界の終り」マスターズ・オブ・ホラー

ケーブルTV用の作品だからでしょうか、残念ながら、ジョン・カーペンター作品なのにシネスコではありません。


例えば山中貞雄監督の作品は、全23作のうち現存が確認されているのは3作品だけです。

この世には様々な事情で見たくても見られない映画というものが存在します。
よく考えたら、見たくても見られないんだから、存在するという表現も変です。でも、例えば、公開後ポジ、ネガともに遺失してしまったと思われていたのに、40年近く経てひょっこりネガが見つかった『オーソン・ウェルズのオセロー』のような作品もあるわけで、「見たくても見られないのに存在する」という奇々怪々な表現は、映画史的には必ずしも間違いとはいえません(しかし、そういう例はごく稀なわけで、保管庫の焼失とかにより「見たくてもホントに存在しないので見られない」作品とか、蒐集家が密かに隠し持ってて「存在するはずなのに見たくても見られない」作品のほうが圧倒的らしいです)。

いきなり、当ブログに似合わないアカデミックな話題から始めてしまいましたが、つまりなにが言いたいのかというと、人目につくというか人に見せてナンボの映画ですらこの有様なのに、鈴木杏ちゃんが「それなら安心だぁ」と太鼓判を押す原子力発電環境整備機構さんのテレビCMは、いくら杏ちゃんのありがたいお言葉がご拝聴できるばかりかニッコリ微笑むかんばせまで拝ませて頂いたからといって、高レベル放射性廃棄物を人目につかない地下300メーターに埋設して保管・管理というのは、どうもにわかに信じがたいとか、しかも、杏ちゃんにつられてついニッコリしてしまったものの、その廃棄物が無害になるまでの期間よりも遥かに短い年月で映画のフィルムはどこに行っちゃったのかわからなくなってるんですけど、ということではありません。
それは、今作が幻とされる映画のフィルムを探す物語だからです。

フィルムを探す主人公がほとんど客の入らないホラー専門映画館の館主だったり、その依頼主がウド・キアだったりというあたりで、かなりグッとくるものがあります。
今作の邦題「世界の終り」とは、ウド・キアが探せと依頼する映画のタイトルのことです。ちなみに、先ほど「見たくても見られない存在」について記述してるので混乱されるかもしれませんが、「世界の終り」は今作の中で創作された映画であって実在する作品ではありません。「いやいや何をおっしゃる、今作の『世界の終り』は確かに映画内映画として創作されたものだけど、実際に今作のようにほとんど人目に触れることなく封印されて人々の記憶から消え去ってしまったホンモノの『世界の終り』が、きっとどこかに密かに実在するんだよ」とかややこしいことは言い出さないでください。「だって、ホラ、今作に出てくる『世界の終り』のポスター。あれ、どこかで見たことあるよ」って、そりゃあんた、アントニオーニの『欲望』のポスターと勘違いしてるだけです。

前述の主人公と依頼者も含めて、登場人物は狂った連中ばかりで、これにもグッときます。
まともな人物は、フランスまで出掛けた主人公が、ある人物に会うために乗ったタクシーの運転手役くらいしか思いつきません。はじめは疾走するタクシーがやや遠景で捉えられているので、運転手の人相風体がよくわからないんですけど、カットが変わって停車すると、それがくたびれた中年のオヤジとかじゃなくて、ちょっといい女。なので、「こりゃもしかして、主人公とチョメチョメじゃない?」と思わせたりしますが、そこは劇場用と違い1時間のTVドラマなのでそんな予想は見事なまでにスパッと裏切られるんですけど、この運転手と主人公がどうチョメチョメなるのかは見てのお楽しみということで、ここでは敢えて書きますまい。

クライマックスでは、あっちの世界とこっちの世界の境界が崩れるカーペンター作品らしい描写もあり、ほぼ全員がチョメチョメしてしまいます。

このままでは山城新伍だと思われかねないので、話題を変えまして、今作には色白で背中に羽根の生えた人物が登場します。
あれが天使だとするなら「世界の終り」は収拾されてしまったわけだし、あれが天使の姿を借りた悪魔だったらここから真の「世界の終り」の上映が始まることになるわけですが、でも悪魔にしては頭を撫でる仕草が優しすぎる気がします。なので、ここはやはり、あれは天使であり、だから、その天使の派遣元の最高責任者こそ「世界の終り」の真の監督である。なぜなら彼が「世界の始まり」を作ったのだから「世界の終り」だって自分で作るはず、というなんだか理屈っぽい解釈を思いつきましたが、イヌも食わない気がします。

ところで、原題「CIGARETTE BURNS」とは、直訳するとタバコの焦げ跡ですが、今作を見ればすぐわかることと思いますが、フィルムのロールチェンジの目安のための印のことで、日本では一般的にパンチ・マークと呼ばれます。モンキー・パンチやマーク・パンサーとは一切関係なく、ましてやモンキー・パンチがマーク・パンサーを殴ったという事実もありません。
パンチ・マーク(シガレット・バーンズ)についてもう少し詳しくご説明させて頂きます。
映画は最初から最後まで1本に繋がったフィルムではありません。約15分くらいずつに切り分けられているんです。ですから、2時間弱だったらだいたい7~8本に切り分けれられています。その分けられた状態を「巻」あるいは「ロール」と呼びます。
2台の映写機に1巻ずつセットして、まず1台目の映写機を動かして1巻目を映し、1巻目が終わったらもう1台の映写機を動かして2巻目を映し、その間に1台目の映写機に3巻目をセットする。これを交互に繰り返すことで1作品の上映になるわけです。
ところが、です。1巻は約15分ですが、必ずも全て同じではありません。
例えば、ちょうど15分あたりが長いワンシーンワンカットの途中だったらそのワンカットが終わらなければ巻を切り分けられません。あるいは、映像だけでなく音もフィルムに入れられてます。カットが変わっても音楽が鳴り続けていたら巻を切り分けられません。しかも、フィルムの音声を読み取る装置は映写ランプとは別の位置にあるため、音は映像よりも前の部分に録音されてます。音が出てないからといってそれが切り分ける目安にもできないのです(やむを得ずだと思いますが、『気狂いピエロ』は長いミュージカルシーンの音楽がなり続けている途中で、巻の切り分けがされていましたけど)。それゆえ1巻ずつの長さがばらつき、映写機を切り替える人にそのタイミングがわかるようにパンチ・マークが入っているのです。
パンチマークは2回出ます。
1回目の5秒後に出る2回目で、ピッタリと映写機を切り替えればいいわけです。
ああ、なんてありがたいんでしょう、パンチ佐藤。

ところがです、実はパンチマークの変わりにフィルムに記録された「情報」を読み取って自動で切り替えるセンサー付きの映写機とかあるんですよ。しかも、1つの映写機に3~4巻分繋げた1時間以上のフィルムが装填できるので、それが2台あれば2時間ちょっとの作品なら上映中に人が介入する必要も無いんです。
さらにですよ、シネコンの場合、フィルム全巻を1本に繋げちゃって上映するタイプの映写機なんです。しかも、シネコンはスクリーンがたくさんありますが、初日はスクリーン1だったけど客が少ないから明日はスクリーン3に、といった場合もプログラム変更するだけで、スクリーン毎にフィルムを装填しなおさなくてもいいんです。
さ、さ、さらにですよ、フィルム無し、デジタルデータを各映画館に配信というシステムもあるんです。
もはや、パンチもマークも要らない時代。

今作の中で主人公の映画館の映写技師が配給会社からの借り物であるフィルムのパンチマークを無断で切り取って「これがないと、映画館はカオス(混沌)におちいるぜ、むひひひ」ほくそえんでらっしゃってました。
なにを時代遅れなことをぬかしてやがる、カーペンター老いたり。

とは思いません。
だって、最新設備のシネコンで上映されるのは、新作ばかりです。
旧作を上映するのはむしろ単館のほうが多いはずです。そして、そうした単館では昔ながらの手動切り替えをしているところもあるはずです。

むしろ、映写室に人がいないシネコンのほうが、上映事故が起きても係員は誰も気付ず客席がカオスにおちいる可能性が高いのではないでしょうか。
だってそういう目によくあったものですから(どんな目かはこちらをご参照ください)。

問:日本では(世界でも?)シネスコなのにビスタで収録されたDVDが発売されている、もしカーペンターが知ったら怒りそうな作品は?
 A.『エスケープ・フロム・LA』
 B.『ヴゥンパイア~最後の聖戦』

正解はこちらのランキングサイトに。


◆こんな記事を読んで頂いたのに、さらにお願いするのも申し訳ない気持ちでいっぱいですけど、こちらのランキングに清き一票あるいはこちらに怒りの一票を◆
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コメント

こんばんは!

ありがたい解説、恐れ入ります。
で、あの映画のプロディーサーって、
誰なんでしょう?

  • 2006/11/06(月) 01:47:53 |
  • URL |
  • 猫姫少佐現品限り #SFo5/nok
  • [ 編集]

パンチ斉藤

なるほど、なんだか勉強になりました。映写の際のパンチマークは、シネコンではいらないのですね。
このノーマン・リーダスの経営する映画館では、次回作が『サスペリア2』なんて言ってましたね~♪
タイトルは私の高校1.2年の時の私の担任のアダナですいません。

  • 2006/11/27(月) 16:41:20 |
  • URL |
  • とらねこ #.zrSBkLk
  • [ 編集]

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  • 2006/11/06(月) 01:39:57 |
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  • 2006/11/27(月) 16:55:40 |
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  • 2007/04/13(金) 09:31:28 |
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