ねこのひたい~絵日記室<ネタバレなしの映画評?>

 ~ネタバレなしでも、読めばガッカリ~

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『それでもボクはやってない』

あなたの「冤罪被害者」度をチェック。

1.電車の扉に上着の裾を挟みがちだ。
2.猥褻な雑誌やビデオ、DVDの類を自宅に所持している。
3.バイト先の未亡人から盗んだ私物を自宅に所持している。
4.上司の命令とはいえ犬を殺せなかったため、辺境の地に左遷されたことがある。
5.間借り先の管理人と結婚した幼なじみで元恋人だった女性に、駆け落ちを持ちかけたことがある。
6.『僕は妹に恋をする』と混同して、友人に向かって『それでもボクは妹とやってない』と何度も言ってしまったことがある。
7.と言おうとして「それでもボクは妹と何度もやってない」と言ってしまったことがある。
8.そのため、友人たちからは「1回はやってるらしい」と思われている。
9.よく考えたら、そもそもボクには妹がいないのである。

07012401.gif



やっと書き上げました。

周防監督、11年ぶりの新作です。
コメディ色の強かった旧作に比べて、題材が題材なだけにシリアスな今作ですが、物語の組み立て方はこれまでとまったく同じです。同じだからってマンネリという意味ではありません。
数名の男女がタッグを組んである目標を達成すべく取り組むという基本構造も同じなわけですが、彼らは一丸に見えつつ微妙にスタンスが異なっているところも同じです。今作には弁護士が3人登場するのですが、彼らは同じひとつの事件に対してそれぞれ別々の思惑を持っています。中でも役所広司演ずる裁判官あがり(くずれ?)の弁護士は、被告人の弁護というよりも、刑事事件の有罪判決率が99.9%という司法制度を糾弾するためにこの刑事事件を引き受けたかのようでした。言動は冷静沈着に見えつつ、かなり熱い人物として設定されているのかもと思って見ていたので、いつか感情を爆発させるんじゃないか、職場や家族にナイショで熱心に社交ダンス教室に通っているんじゃないか、別れた妻に今の職業を隠そうとしてトナカイの被り物までかぶってしまうんじゃないか、でもそれは全て彼のドッペルゲンガーがやってるんじゃないかと、ヒヤヒヤさせられてしまいましたが、そんなシーンは「不見当」であります。

それにしても「有罪判決99.9%」って、被告や弁護側にとっては「成功率0.1%のミッション」であります。これをミッション・インポッシブルと言わずして、なにがミッション・インポッシブルであろうか、というハリウッド映画においても王道中の王道であろうミッションであります(99.9%という数字は、路上で拳銃を乱射しているところを警察官に現行犯逮捕されたような事件の裁判も含んでるわけで、ちょっと煽り過ぎかなと思わなくもありませんけど)。
ところが、周防監督は「満員電車での痴漢行為を巡る裁判」という、地味なミッションを用意します。地味な題材でも、例えば列車と平行して飛ぶヘリコプターの空撮から一気に車内にカメラが入り込み人波掻き分けてお尻に触れる手がアップになるまでをフルCGにしたり、ワイヤーアクションでスカートを翻らせたりと、ハリウッドばりに派手に見せることも可能かもしれませんが、そんな演出はしていません。
しかも、主役はトム・クルーズではなく加瀬亮です。検事が近くに寄ってきたわけでもないのに、法廷の被告人席ではいつも裁判長から見て左、つまり検事側を避けるかのように上半身が傾いている加瀬亮です。トム・クルーズだったらいとも容易く完了できそうな地味なミッションも、このボーッとした青年にはかなりハードルが高そうだ、と思わせてくれる加瀬亮です。米兵にスコップぶんぶん振り回して抵抗してたのにとりあえず殴られはしたものの一命を取り留めたツいてる男ではなく、米兵を信用して投降したのに面倒だからと殺されちゃったツいてない男、加瀬亮です。

ネタバレになるので詳しくは書けませんが、ある伏線の張り方とその伏線が最後に辿り着く結末の付け方は、決してワン・ミニッツ・レスキュー型のサスペンスとして描かないところも含めて実に見事です。また、ヒトの視野を狭くして視点を固定化させ冷静な判断力を麻痺させる「感情移入」なんていうシロモノをも、痛烈に批判しているように感じられました。

「感情移入」とはちょいと違うかもしれませんが、「アッコにおまかせ」というテレビ番組で、風見しんご氏のお子さんが亡くなられた事故について、和田アキ子女史が「子供が被害者となる犯罪行為を厳罰化せよ」とする旨の発言をしておられました。
確かに、子供が巻き込まれた事件や事故というのは痛ましく感じられます。なので「将来ある子供なんだから、彼らへの加害行為はより重い刑罰に処すべき」という論理は、一見すると正論のように思えます。
しかし、それを裏返せば、「半身不随で寝たきりのいつ死んでもおかしくない老人への加害行為は、子供への加害行為より軽い刑罰でよし」というとんでもない論理なわけです。「来年あたりノーベル賞候補になりそうな素晴らしい研究をしている大学教授」も「ゴミ収集所で残飯をあさっているところを目撃した近所の主婦から『ゴミをあさってる社会のゴミ』と呼ばれたホームレス」も、法の下では平等であるはずです。だから、「美しい国づくりのため日本の教育を改革しようとしている首相」を殺した人だって、「毎日を鼻クソほじりつつ映画のことばかり考えてヘラヘラ生きてるサラリーマン」を殺した人だって、同じ法律で裁かれなくてはいけないのではないでしょうか。


タワゴトはこのくらいにして、再び今作のことを鼻クソほじりつつ考えることにします。


周防監督、11年ぶりの新作です。
『Shall We ダンス?』以来の、新作であります。伊丹十三氏の死後以来の、新作であります。
ご存知のように、周防監督の一般認知度が高くなったのは、伊丹監督の『マルサの女』のメイキング「マルサの女をマルサする」からでした。伊丹監督が得意としていた「ある職業に特化した、誰もが知ってるようで知らない世界を徹底取材して、娯楽映画にする」という手法は、そのまま、周防監督の作品にもあてはまる手法です。

(ここからかなり乱暴乱雑に根拠なき憶測と妄想が続くので、わずかでも不快に感じたら、それ以上読まないでください。)
同じ手法の両者ですが、周防監督の作品は興行、批評のどちらからも高評価を得ていったのに対し、「宮本信子主演」という括りに囚われた伊丹監督作品が次第に批評面でも興行面でも華々しさを失っていったのがほぼ同時期でした。周防監督が『Shall We ダンス?』で大成功を収めたのち、伊丹監督は裁判証言者の護衛を扱った作品『マルタイの女』を最後に、謎の自殺を遂げてしまいます。
周防監督がなかなか新作を撮らなかったのには、伊丹監督の死も影響を及ぼしていたのかもしれません。11年の沈黙を経ての今作が、裁判を題材にしているのも、偶然ではないと思います。

ところで、「ある職業に特化した、誰もが知ってるようで知らない世界を徹底取材して、娯楽映画にする」というと三谷幸喜氏がおられます(三谷氏のお仕事全てに精通しているわけではないので、彼の監督作品に限定ですが)。しかも、三谷氏は、伊丹監督の遺作『マルタイの女』にアドバイザーとして参加しておられます。
同じ手法の3者ですが、三谷氏が映画監督として『ラヂオの時間』を手がけられて以降、伊丹監督は亡くなり、周防監督は沈黙してしまいました。しかも、三谷氏はいけしゃあしゃあと監督作品を発表し続けになられ、そればかりか『有頂天ホテル』は大ヒットまでしてしまいます。
周防監督が久々の新作を撮ったのには、映画界でも寵児になった三谷氏も影響を及ぼしていたのかもしれません。ちなみに、そんな三谷氏が映画界で注目されることになったのが、『12人の優しい日本人』という裁判を巡る物語だというのも、偶然ではないのかどうかよくわかりません。


ところで、「カギの掛かったドア」には「1回目の体当たりや蹴りでブチ破ってはいけない」という法則があるように、「少なくとも1名は途中で相手から視線を外し、おもむろに欄干に肘を付き、川面を眺めなくてはいけない」というのが「橋の上の会話」の法則であります。今作では、役所が田中哲司演ずる当番弁護士と、弁護士事務所の近くの設定でしょうか、上に首都高の高架があり下に川が流れる橋の上(というより川がなければただの道路にしか見えないんですが)で会話を交わすシークエンスで、その法則が発動していました。
今作の「橋の上の会話」の法則を見ていて、「ダムド・ファイル」というテレ朝系列地方局が製作したホラードラマを思い浮かべてしまいました。
『ありがとう』の万田邦敏監督による第1話だったかと思いますが、「橋の上の会話」の法則が発動したシークエンスが出てきます。その橋の欄干は大人の腰よりも低く、そこに肘を付くとたいへん不自然な前かがみ状態になってしまうであろう高さなのに、です。欄干の形状に関係なく非情にも発動してしまう法則の恐ろしさを思い出して、震撼しつつ、大笑いしつつ、クイズです。

問1:周防監督作品には必ずトイレで放屁のシーンが登場しますが、今作はどこで?
 A.警察の拘置所
 B.検察の同行室

正解はこちらのランキングサイトに。

問2:鈴木蘭々が身に着けていたスパッツの色は?
 A.黒
 B.ベージュ

正解はこちらのランキングサイトに。


◆こんな記事を読んで頂いたのに、さらにお願いするのも申し訳ない気持ちでいっぱいですけど、こちらのランキングに清き一票あるいはこちらに怒りの一票を◆
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コメント

笑った

いきなり笑わせないでください~
にら様には妹君はいないのですね?
う~む・・・

  • 2007/01/24(水) 13:35:14 |
  • URL |
  • kossy #YaTS71PM
  • [ 編集]

ねこの背中のシマシマが哀しいデス...

2は、誰でもやってるので”タイトル読んでみろよ!拷問”がツライですね。
3は”ハチクロ”ですかい?
4は”硫黄島”の加瀬亮?!
6は、ヤバイ。
7は、もっとヤバイ!
てな事で、楽しませていただきました。

  • 2007/01/25(木) 11:01:29 |
  • URL |
  • あん #-
  • [ 編集]

こんばんは~

ほんと、大変な映画でしたね~
男の人はばんざいで乗るしかないですね♪

おばさんでよかった。。。

  • 2007/01/27(土) 00:26:18 |
  • URL |
  • うさぎ #-
  • [ 編集]

それで、モボクはやってない。と判明した映画だそうですね。(注:モボク=人名でしょう?)

  • 2007/01/27(土) 16:40:23 |
  • URL |
  • ボー・BJ・ジングルズ #0M.lfYJ.
  • [ 編集]

おいおい!

そういう了見だから・・・って思わず突っ込んでしまいました。
今回も笑わせてもらい、ありがとうございます。

  • 2007/01/29(月) 19:38:49 |
  • URL |
  • アイリス #-
  • [ 編集]

にらさん
今晩は★☆
記事を再度読みました。いやあ~~読めば、読むほど頭の中はグルグル(@_@;)状態に・・・・。にらさんの独特な雰囲気を出してはるな!と感心。TB・コメントどうもでしたm(__)m

  • 2007/02/08(木) 23:30:11 |
  • URL |
  • mezzotint #za3Mv/QM
  • [ 編集]

無罪放免な皆さま

◆mezzotintさま
チビチビ書き足したせいで、自分でもなにが書いてあるのかわかりません。

◆アイリスさま
触ってても、触ってなくても、否認したら同じ目に逢うんですよ。
さぁ、男性諸氏よ、どっちがお得?(おいおい)

◆ボー・BJ・ジングルズさま
「それ、デ=モボク」と「デ=ニーロ」風に切ってはだめでしょうか。

◆うさぎさま
電車に乗ったとき「痴漢に間違えられたくないので、ボクと手をつないでください」と可愛い女の子に声を掛ける勇気がないので、マイカー通勤してます。

◆あんさま
えーと、かえるです。
「ねこのひたい」なのに、かえるなんです。

◆kossyさま
残念ながらkossyさんに紹介できるような妹はいません。
かといって、妹以外の女性を紹介するわけではありません。

  • 2007/02/09(金) 17:25:29 |
  • URL |
  • にら(執行猶予付管理人) #lcbXb0/Q
  • [ 編集]

伊丹

そうか~、この二人は、色濃く伊丹十三の影響を受けてるんですね~。
三谷が嫁はん主演で映画を作らない理由も、この辺にあるのかも。

もう一人、伊丹の影響下を受けた監督は、裁判までおこすほどケンカしたんで、わが道をいってますな~。

  • 2007/02/10(土) 22:30:59 |
  • URL |
  • aq99 #-
  • [ 編集]

影が、逆…?

お久しぶりです。達也です。
ここんとこ花粉症にやられて、
映画もブログもご無沙汰しておりました。
やっと観に行った『それボク』ですが、
もらった宝くじに当たったような、
忘れていたポケットの1000円札を見つけた様な、
何だか得した気分です。
あっ、にらさん。
格子の影と猫の陰が、逆に伸びています。
コレは何かのメタファーでしょうか・・・?

  • 2007/03/12(月) 22:05:58 |
  • URL |
  • TATSUYA #-
  • [ 編集]

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それでもボクはやってない

主文、評価は満点とす。日本の裁判制度の矛盾点と冤罪事件で被疑者とされた者と弁護士による国家権力に抗う姿、それによって正しき主張をも蔑ろにしてしまう社会の醜さをも描いた本作は大いに評価できるものである。

  • 2007/01/24(水) 13:35:56 |
  • ネタバレ映画館

それでもボクはやってない

ー電車の中では、結界を張るしかないねーby良守・『結界師』田辺イエロウ。センター試験の日は、いつも寒っ!ですが、電車が止まる程の雪じゃなくて良かったですね。お正月明け、やっと、観たい映画がずらり並びまし

  • 2007/01/25(木) 11:04:42 |
  • 描きたいアレコレ・やや甘口

それでもボクはやってない

見てきました。。。 いや~大変ですよね。。。無実なのにあれよあれよで有罪決定說 世の中にはいろんな事件があるけど 納得できないものいっぱい獵 うさぎの納得いかない事件は飲酒運転で子供を2人殺してるのに 結構軽い判決が下りた事件。。。 子供

  • 2007/01/27(土) 00:23:21 |
  • ちわわぱらだいす

それでもボクはやってない(映画館)

これが、裁判。

  • 2007/01/28(日) 16:10:58 |
  • ひるめし。

それでもボクはやってない ★★★★☆

もう真剣に見入ってしまいましたよ、あぁ怖いー!社会派というか、私にとっては啓蒙映画でした。「正義は必ず勝つ」なんて青臭いことは言いませんが、少なくとも「疑わしきは罰せず」と思っていたのに。監督 周防正行 脚本 周防正行 音楽 周防義和 出演 加瀬亮 、瀬戸朝

  • 2007/01/29(月) 19:40:00 |
  • To be continued.

それでもボクはやってない

これを観た男性諸氏は満員電車に乗るとき両手を上げていたくなる・・・にちがいない!観たかった!待っていた!周防監督の最新作♪しかもテーマが「裁判」これね、劇場予告とかCMとか観てる限りでは、コメディー風味なのかしら、な~んて気軽に思ってたけどとーんでもない

  • 2007/02/04(日) 08:51:09 |
  • UkiUkiれいんぼーデイ

「それでもボクはやっていない」を観た・・・・。

 最近、富山で○○罪で実刑判決を受けた男の人が二年9ヶ月服役後、無罪だという事が判明した。それは昨年8月に別件で逮捕された男が「自分がやった」という自白からだ。警察の取調べもかなり不十分だったようである。しかし無罪であることを主張することも出来なかったそ

  • 2007/02/04(日) 23:27:10 |
  • 銅版画制作の日々

「それでもボクはやってない」映画感想

ええと、当初見るつもりでは無かったこの映画、ところがネット上のあらゆるところで絶

  • 2007/02/10(土) 22:15:19 |
  • Wilderlandwandar

「それでもボクはやってない」 赤トレーナーの人

ジョージ・ルーカスとか、テレンス・マリックとか、ブランクのあいた監督の作品を見るにつけ、期待してもあかんやろな~と思う間もなく、すぐに2件の痴漢が始まり、間違われて、取調べされて、勢い流されるままに留置場泊まりになり、自分は悪いことしてないからすぐに出ら

  • 2007/02/10(土) 22:21:02 |
  • 『パパ、だ~いスキ』と言われたパパの映画日記

映画「それでもボクはやってない」は日本の裁判制度、冤罪問題をさりげなく抉る傑作。植草事件を想起させる

昨日見て来た映画の一つが「Shall We ダンス?」以来11年ぶり になるとか

  • 2007/02/15(木) 01:51:04 |
  • 株で儲けて温泉だ

映画「それでもボクはやってない」

それでも、それでもボクはやっていない。控訴します!!刑事事件で起訴されたら有罪率99.9%、冤罪事件にかぎっても97%が有罪になるという実態・・ 仕事もせずブラブラしていた金子徹平(加瀬亮)、ようやく面接にこぎつけて会社に向かうが途中で履歴書を忘れたこと

  • 2007/02/16(金) 01:05:56 |
  • 茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~

「それでもボクはやってない」

電車の中で痴漢をした犯人とされて捕まった男。彼が捕まるところから始まり、最初の裁判が終わるまでの様子を克明に追う映画。ボクはやってない、というが、ほんとにやってないのだろうか、と、観ている間じゅう、ずっ

  • 2007/03/10(土) 01:21:38 |
  • 或る日の出来事

『それでもボクはやってない』を観た。

ボクを本当に裁けるのは、僕だけなのだ。『それでもボクはやってない』を、観てきました。劇場は、久々の『TOHOシネマズなんば』。しかし、3月に入って初レビューです。実は、2月の中旬からナナ何と、つい

  • 2007/03/12(月) 22:06:27 |
  • TATSUYAのシネマコンプレックス

それでもボクはやってない [監督:周防正行]

全てがQ&Aな脚本。色んな意味で血も涙もないマシーンのような薄気味悪い映画。

  • 2007/04/10(火) 00:55:52 |
  • 自主映画制作工房Stud!o Yunfat 映評のページ
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