ねこのひたい~絵日記室<ネタバレなしの映画評?>

 ~ネタバレなしでも、読めばガッカリ~

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玄関先の解体ショー

その坂道で出くわすのは、それは奇妙なことばかりでした。


その日は、ポケモンのイベントを見るため、ある住宅展示場へ行きました。
新聞の折り込み広告には「ピカチューが来る!」なんて書いてありましたが、正確には「ピカチューの着ぐるみしか来ない!」です。しかも、この夏公開されるポケモン映画の宣伝をスピーカーから流してるだけのイベントだったわけです。
それも10分程度で終わり、残りの時間は、知ってる日本語は自分の名前だけという極めて語彙の乏しいピカチューに進行などできるはずなく、司会のおねえさんが大活躍するというありさまです。その内容はピカチューにお越し願わなくても成立するシルエットクイズとイントロ当てクイズ。子供だまし、というか「だます」熱意すら感じられません。

悲しくてとてもやりきれない思いを抱えつつクルマを走らせて、あるゆるやかな坂道で渋滞にハマり、ますますやりきれなくなっていたときです。ふと、あるお宅に目が留まりました。

そのお宅の庭には、真ん中に穴の開いた円盤状の形をした石が4つほど立てた状態で横並びに隣接して置かれていました。
目に留まったのはその大きさで、人の背丈を優に越える直径は2メーター以上はあると思われます。まるで「原始家族フリントストーン」といいますか、園山俊二氏描くところの「ギャートルズ」といいますか、それらに登場する巨大な石のおカネにソックリなものが、塀のように並んでいるのです。
「地震で倒れたら危ない」とウチのものが心配する気持ちもわかりますが、このゆるやかな坂道を、4つの大きな石のおカネが倒れずにコロコロ転がったら面白いのに。
「あんまりジロジロ見てると、住んでる人に怒られる」と注意されましたが、家の中から怒ったゴンのお父さんが、あるいは怒ったゴンのお父さんの声が石になって飛び出てくるんじゃないかと思うと、目をそらすことができません。
やがて、前のクルマが進みだします。それ続いてアクセルを踏むと、家は視界から遠ざかり、どんな人が住んでるのか確認できませんでした。誰も家から出てこなかったのは、お昼どきだったのでマンモスの肉を食べてたからだと思われます。

しばらく進むと、今度は反対側の道沿いにある家に目に留まりました。

そのお宅にも塀がありましたが、それは大人の胸の高さ程度のどうってことないブロック塀です。建物も比較的新しいという以外にはそれほど特徴的でもありません。目を惹いたのはそのふたつの距離です。
玄関に取り付けられたドアは手前に開くタイプです。
そのドアの幅より、塀までの距離のほうが短いんです。
なので手前に開きすぎると、ドアがブロック塀に当ります。
標準体型の人が出入りするだけなら、ドアを開けるときにちょっと注意すれば特に問題はない程度の幅はあります。しかし、標準体型の人がいつも手ぶらとは限りません。
「おおきなスイカを買ってしまった」
塀やらドアやらにぶつけて、割ってしまいかねません。ドアをくぐれる大きさに玄関先でカットしなくては。
「マグロを丸ごと買ってしまった」
玄関と塀の距離に頓着しない人ですから、そんな買い物しないとも限りません。さっそく、玄関先で解体ショーです。
そのうち、玄関先で調理して、そのまま食べちゃうようになります。
マグロのようにバラバラにするわけにいかないベッドは買わずに、玄関先に布団を敷いて寝ることにすら頓着しなくなります。
起きて着替えるのも玄関先。
歯磨きは、近所を散歩しながら。
ということは、さっき見かけた石のおカネも、実はこの家の住人が買って並べておいたんですね。あらゆる生活物資を家の外で使うなら、それらを購入する資金だって外に置くはずです。

そんなこと考えてるうちに、じわじわクルマは進みます。その家に誰か出入りしやしないかとバックミラーばかり見ていたので、正面から男性が歩いてきていたのに気づきませんでした。
淡い色のズボンに白いポロシャツで、ゴンのお父さんとは似ても似つかぬ外見ですが、この人がここの住人です。間違いありません。

なにしろ、歩きながら電気シェーバーでヒゲを剃ってるんですから。

クルマの横を通り過ぎた男性をバックミラーを通して目で追います。
男性は、その家の前で一瞬立ち止まるかのような仕草をしました。
しかし、家に入ることなく通り過ぎてしまいました。
見られていると気づいたのか。
それとも、ドアをくぐれないほど大きなマグロか冷凍マンモスを調達しに行ったのか。
クルマを離れて追いかければ、まだ間に合う距離です。
ドアを開けて、10歩、いいえ、5、6歩で、男性の肩に手が届きます。
大きな声を出し肩を揺さぶって、それでも白状しないなら頬を平手で張り倒す。
しかし、大人なのでそんなことはしません。秘密を知られた口封じに玄関先で解体される危険は冒さない、それができてこそ大人ってもんです。

男性はそのままゆるやかな坂道をくだってゆきました。ヒゲを剃りながら。
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